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Uncharted Territory

自分が読んで興味深く感じた英文記事を中心に取り上げる予定です

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芸術メディアとしての本

 
漱石の美術世界の展覧会では『吾輩は猫である』の初版本の装丁や挿絵も紹介されていました。今では文学の本で挿絵入りというのは大人向けの本ではあまり見かけませんが、ディケンズの本なんかも挿絵がありますよね。夏目漱石ならiPad向けにどんな本を作るのだろうかと想像がふくらみます。



そこで思い出したのが『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(Extremely Loud & Incredibly Close)の原作を書いたジョナサン・サフラン・フォアが、本というメディアの可能性を探る本のことです。





渋谷のタワーレコードでこの本が売られていたのですが5000円以上したので買えていませんし、ビニールに入っていたので中身も確認できていません。。。
 

ラファエロ展を見逃した方も漱石展があります

 




上野の東京芸術大学の大学美術館で『夏目漱石の美術世界』という展示会が開かれています。先週終了したラファエロ展は点数が少なかったので肩すかしの面もあったのですが、漱石の展示会は逆に期待以上のものでした。

今回初めて芸大に併設している美術館にいったのですが、なかなか立派なものでした。展示室も大きくなく、点数も少ないこじんまりした展示会を想像していたので、普通の美術館のようなしっかりした建物だったので驚いてしまいました。展覧会は、漱石の本の装丁、漱石の作品に登場している英国を中心とした世紀末芸術と日本の芸術作品と同時に、漱石と同時代の日本の芸術作品も見ることができました。

近代日本を代表する文豪、また国民作家として知られる夏目漱石(1867-1916)。この度の展覧会は、その漱石の美術世界に焦点をあてるものです。漱石が日本美術やイギリス美術に造詣が深く、作品のなかにもしばしば言及されていることは多くの研究者が指摘するところですが、実際に関連する美術作品を展示して漱石がもっていたイメージを視覚的に読み解いていく機会はほとんどありませんでした。
この展覧会では、漱石の文学作品や美術批評に登場する画家、作品を可能なかぎり集めてみることを試みます。私たちは、伊藤若冲、渡辺崋山、ターナー、ミレイ、青木繁、黒田清輝、横山大観といった古今東西の画家たちの作品を、漱石の眼を通して見直してみることになるでしょう。
また、漱石の美術世界は自身が好んで描いた南画山水にも表れています。漢詩の優れた素養を背景に描かれた文字通りの文人画に、彼の理想の境地を探ります。
本展ではさらに、漱石の美術世界をその周辺へと広げ、親交のあった浅井忠、橋口五葉らの作品を紹介するとともに、彼らがかかわった漱石作品の装幀や挿絵なども紹介します。当時流行したアール·ヌーヴォーが取り入れられたブックデザインは、デザイン史のうえでも見過ごせません。
漱石ファン待望の夢の展覧会が、今、現実のものとなります。

影響を与えた芸術作品と漱石の著作の抜粋が並べて展示してあるので、アールヌーボやラファエル前派などが漱石に影響を与えたことはこの展覧会を見ることで実感できます。漱石の著作の影響とは別に漱石と同時代の日本絵画も展示してあって、1900−10年あたりは印象主義やポスト印象主義の影響が日本にも強くあったことがわかりました。


世紀末と漱石 (岩波人文書セレクション)世紀末と漱石 (岩波人文書セレクション)
(2010/12/11)
尹 相仁

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そこでふと思ったのは、漱石はなぜ印象主義やポスト印象主義は作品に取り入れなかったのかという疑問です。この展覧会と同じように世紀末芸術と漱石の関係を考察した著名な『世紀末と漱石』という著作によれば、印象主義も少し取り上げていて漱石はその芸術動向は理解していたようです。

まあ、印象主義やポスト印象主義は、当時の現代芸術といえども、目に見えるものを扱う印象主義よりは、目に見えないものを扱う象徴主義のようなものを好んでいた漱石の趣味にはあわなかったから作品にはそれほど登場しなかったのでしょうかね。もちろん、フロベールが『ボヴァリー夫人』のような写実主義だけでなく、『サランボー』『聖アントワーヌの』などの幻想的な作品を描いた二面性は漱石にもあるようですが。。。

英国留学で生の芸術作品に触れただけでなく、帰国後もStudioという美術・工芸雑誌を定期購読して熱心に読んでいたようです。

Studio (1893-1988)
Published in London and devoted to the fine and applied arts, Studio magazine was founded in 1893 by Charles Holme, an artistically well-connected businessman who lived in William Morris's Red House. With an international readership it did much to promote British design abroad, particularly in the late 19th and early 20th centuries when many illustrated articles on the graphic artist Aubrey Beardsley, architect-designers Charles Rennie Mackintosh, Charles Annesley Voysey, and others appeared. Similarly, it did much to introduce its British readers to Art Nouveau and a wide range of other European developments surveyed in articles and notices. Its first editor was C. Lewis Hind, although he was soon replaced by the influential and effective Gleeson White. So successful was the magazine in its early years that an American version, entitled International Studio, was launched in 1897, a series of Special Issues produced from 1898 until 1939, and, from 1907 until the 1980s (with some adjustments of title), The Studio Yearbooks of Decorative Art provided useful surveys of international design and interiors. The First World War seriously affected the magazine's readership and, under the editorship of Geoffrey Holme (son of the founder), a generally conservative line was pursued in the interwar years. In the 1960s the magazine was retitled Studio International and devoted itself to modern art.

絶対あり得ないことですが、もし漱石が英国でなく、パリに留学していたとしたら、作品で取り上げた美術作品も変わったのかもしれないなとそんなことも思ってしまいました。
 

花はどこまで花と呼ぶのか

 
国立近代美術館のフランシス・ベーコン展にいってきましたので、雑感を少し書いておきます。サザビーズやクリスティーズが取り上げているように最も評価の高い=高額の落札価格の画家のようですね。





自分が気になったベーコンの言葉とされているものを抜き出しのが以下になりますが、「変形」した部分ばかりが強調されがちなのですが、自分には彼は事象の本質を感じ取ろうとしたように思えたのです。

What I want to do is to distort the thing far beyond the appearance, but in the distortion to bring it back to a recordig of the appearance.
(やりたいことは事物を見かけからかけ離れた形に変形することです。しかし、その変形の中ではその見かけを記したものに立ち戻らせることなのです)

And this is the obsession: how like can I make this thing in the most irrational way? So that you're not only remaking the look of the image, you're remaking all the areas of feeling which you yourself have apprehensions of
(こだわっていることは、どのようにしたら理性とは無縁の方法でこのものを作り上げることができるか、なのです。像のみかけを再現しようとするのではなく、身に付いている感覚のあらゆる領域を作り直していくことなのです)

Hardly anyone really feels about painting: they read things into it – even the most intelligent people – they think they understand it, but very, very few people are aesthetically touched by painting.
(ほとんど誰も絵画を感じ取っていません。絵画から物事を読み取っているのです。最も知的な人でさえそうなのです。絵画を理解していると考えていますが、絵画から美的な感動を受ける人はほとんどいないのです)

満開の花を見れば「花」であることを認識しますが、しおれた花、散り始めの花、全部が散った花、枯れかけた花。。。僕たちはどこまでを花と呼べばいいのか、花を成立させていものは一体何なのか、そんな取り組みのように自分には思えました。

そのような観点から鑑賞していたので、ウィリアム・フォーサイスが踊っているペーター・ヴェルツによる作品は、その事物の存在感そのものを追体験しようとしているようでした。この映像作品を見てから、ベーコンの絵画を見直せば新たに感じ取れるものが出てくるかもしれません。

(ウエブサイト)
エピローグ:ベーコンに基づく身体
これまで見てきたように、ベーコンの描く身体は、つねに空間や時間(物語)との間の緊張関係にありました。とすれば当然、その作品は、ダンサーたちにとって魅力的であり続けてきました。ここでは、ドイツのアーティストのペーター・ヴェルツが、同じくドイツを代表する振付家であるウィリアム・フォーサイスとともにつくった作品をご紹介します。アトリエに残されていたベーコンの絶筆をベースにして、フォーサイス自ら振付けて踊った映像をもとに、ヴェルツが制作した映像インスタレーションです。ルーヴル美術館で展示されたこともある本作が日本で紹介されるのは初めてのことになります。






まあ、なんでこんな変なことを考えてしまったのかというと、外国語の言葉を学ぶ時に、ある単語はどこまでの範囲で使えるのだろうか、beautifulという単語があるとしたら、それはどういう事象に対して、どういう事物に対して使えばいいのか、と結構迷うんですよね。コロケーション辞典はとっかかりとして便利かもしれませんが、すべてを網羅しているわけではありませんし、ある人のbeautifulの使い方と別の人のbeautifulの使い方には多少の違いもあるでしょう。言葉って身近なモノとして使っていますが、実体的なものがあるようでないものでもあるんですよね。
 

Popeつながりで。。。

 

(ウィキクオートから)
I feel ever so strongly that an artist must be nourished by his passions and his despairs. These things alter an artist whether for the good or the better or the worse. It must alter him. The feelings of desperation and unhappiness are more useful to an artist than the feeling of contentment, because desparation and unhappiness stretch your whole sensibility.
As quoted in The Artist Observed: 28 interviews with contemporary artists (1991) by John Gruen, p. 3
(強く感じていることは、芸術家は自分の情熱と絶望を糧にしていかなければいけないということです。これらは芸術家を変えていきます。良い方向に、より良い方向に、もしくは悪い方向かもしれませんが、芸術家を変えることには違いありません。絶望や不幸の感情は芸術家にとっては満足感よりもずっと有益です。絶望や不幸の感情は、芸術家の感受性全体を広げてくれるからです)

まだあと2週間ほどありますが、フランシス・ベーコン展が開かれるようですね。Knowledge is powerじゃない方のベーコンです(笑)

目撃せよ。体感せよ。記憶せよ。
ピカソと並ぶ美の巨匠。没後アジア初の回顧展
フランシス・ベーコン展


記事タイトルは、ベラスケス『教皇インノケンティウス10世』の習作を描いていたつながりでちょっと強引ですが、時事ネタと絡めてみました(苦笑)日本独自の展覧会と書いてありましたが、方向性としては以下の展覧会に近いのではないかと思います。



英語の講演会があるので、是非とも行ってこようと思いますが、先着順とあるので満席だったときが痛いですね。


特別講演会
3月8日(金) 18:00〜19:30 講師: ペーター・ヴェルツ(本展出品映像アーティスト)
4月6日(土) 14:00〜16:00 「無秩序の中に秩序を見い出す―フランシス・ベーコンのスタジオ」
講師:マルガリータ・カポック
(ダブリン市立ヒュー・レーン近代美術館 コレクション統括)
会場:東京国立近代美術館講堂(地下1階)
*開場は開演30分前 *申込不要、参加無料(先着140名)
*逐次通訳つき




フランシス・ベーコンといえば、David Sylvesterのインタビューが有名ですが、彼の関わった1985年のドキュメンタリーがYoutubeにありました。本当にいい時代になったものです。



フランシス・ベーコンへのDavid Sylvesterのインタビューがガーディアンで抜粋を読めました。Popeを描いたいきさつを説明しているところを抜粋します。

'One continuous accident mounting on top of another'
An edited extract from Interviews with Francis Bacon by David Sylvester in 1963, 1966 and 1979
David Sylvester
The Guardian, Thursday 13 September 2007 00.04 BST

But you do, in fact, paint other pictures which are connected with religion, because, apart from the crucifixion, which is a theme you've painted and returned to for 30 years, there are the Popes. Do you know why you constantly paint pictures which touch on religion?
In the Popes it doesn't come from anything to do with religion; it comes from an obsession with Velasquez's Pope Innocent X.

But why was it you chose the Pope?
Because I think it is one of the greatest portraits that have ever been.

But aren't there other equally great portraits by Velasquez which you might have become obsessed by? Are you sure there's nothing special for you in the fact of its being a Pope?
I think it's the magnificent colour of it.

But you've also done two or three paintings of a modern Pope, Pius XII, based on photographs, as if the interest in the Velasquez had become transferred on to the Pope himself as a sort of heroic figure.
It is true, of course; the Pope is unique. He's put in a unique position by being the Pope, and therefore, like in certain great tragedies, he's as though raised on to a dais on which the grandeur of this image can be displayed to the world.


Francis Bacon interviewed by David Sylvester (23 March 1963)


3月は、ラファエロ展やルーベンス展など充実しているので楽しみですね。
 

展覧会、プチお得情報

 

(西武の展覧会は上記のようなカラーの写真はほとんどなく、モノクロ写真ばかりです)

大規模な展覧会ではなく小さな展覧会ですので、池袋に用がある方向けのだいぶニッチな情報です。下記に「「クラブ・オン」「ミレニアム」カード会員の方はカードのご提示でご入場は無料」とありますが、スマホで7SPOTの会員登録している方も無料入場券をゲットできました。

ウエブサイトでの説明
ロバート・メイプルソープ flowers写真展
■会期:2013年2月1日(金)~14日(木)
■会場:別館2階=西武ギャラリー
■開場時間:午前10時~午後8時
※ご入場は閉場の30分前まで
■入場料:一般・大学生500円(高校生以下無料)
※最終日2月14日(木)は、当会場のみ午後6時にて閉場いたします。
※「クラブ・オン」「ミレニアム」カード会員の方はカードのご提示でご入場は無料となります。
■主催:西武池袋本店

花たちに託されたメイプルソープの遺産。時を越え咲き誇る、カラーを含む100余点の貴重な作品群。


以上が「プチお得情報」です(苦笑)メイプルソープの写真ってセクシャルでセンセーショナルってイメージだったので、意外な一面を見れたという感じです。



また、この写真展に興味を持ったのはだいぶ前にパティスミスのJust Kidsを読んだからという理由にすぎません。。。



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