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Uncharted Territory

自分が読んで興味深く感じた英文記事を中心に取り上げる予定です

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猿が手を持つから始めて「クライブ」に終わる教育

 
『漱石文明論集』に収載されている「断片」に以下のようなことが書いてあります。こういうのを漱石の慧眼とか引用したくなりますが、エジプトのパピルスにもあったとされる「最近の若いものは云々」というよくある文句の一種だと思うので、語っている内容には特にコメントしません。

断片 明治34年4月頃
(1) 金の有力なるを知りし事。
(2)金の有力なるを知ると同時に金あるものが勢力を得し事。
(3)金あるものの多数は無学無智野鄙なる事。
(4)無学不徳義にても金あれば世に勢力を有するに至る事を事実に示したる故、 国民は窮屈なる徳義を棄て、 ただ金をとりて威張らんとするに至りし事。
(5)自由主義は秩序を壊乱せる事。
(6)その結果愚なるもの無教育なるもの齢(よわい)するに足らざるもの不徳義のものをも士大夫の社会に入れたる事。
(7)昔時は金の力を以て社会的の地位は高まらざりし事。 御用達は一個の賤業にして金あるため尊敬は受けざりし事。
(8)猿が手を持つから始めて「クライブ」に終わる教育の恐るべき事。 英語を習って英語より受くるCulture を得るまでには読みこなせず、 去りとて英書以外のカルチュアー( 漢籍和書より来る) は毛頭なし。 かかる人は善悪をも弁ぜず徳義の何者たるかをも解せず、 ただその道々にて機械的に国家の役に立つのみ。 毫も国民の品位を高むるに足らざるのみか器械的に役立つと同時に一方には国家を打ち崩しつつあり。


現代の英語教育にも絡めて引用されるのは8番のところのようですが、最初の「猿が手を持つから始めて「クライブ」に終わる教育の恐るべき事。」は省かれることが多いようです。

(8)猿が手を持つから始めて「クライブ」に終わる教育の恐るべき事。 英語を習って英語より受くるCulture を得るまでには読みこなせず、 去りとて英書以外のカルチュアー( 漢籍和書より来る) は毛頭なし。 かかる人は善悪をも弁ぜず徳義の何者たるかをも解せず、 ただその道々にて機械的に国家の役に立つのみ。 毫も国民の品位を高むるに足らざるのみか器械的に役立つと同時に一方には国家を打ち崩しつつあり。

今回気になったのは「猿が手を持つから始めて「クライブ」に終わる教育の恐るべき事。」ということです。何のこっちゃわからなかったのですが、要は初等教科書から大学の副読本までを指している感じです。(ただしYutaによるネット検索による推測で、間違っている可能性もあるので取り扱い注意です!)

まずは「猿が手を持つ」の方から。的確に説明してくれているブログがありました。

※「猿が手を持つ」
"The Ape has hands"
当時の中学校用英語の教科書として用いられた"The First Reader of the School and Family Series"(Marcius Willson)、"The English Reader for Japanese Scholars 第一巻"(J.Kuruta 来田丈太郎)には、"The Ape has hands"の一文が最初の英語文として示されており、当時の中学生が最初に習う英語文としてよく知られていたものと思われる。今で言う"This is a pen"のようなものか。


本当にいい世の中になったと思うのはこの教科書を読むことができることです。ApeというのはアルファベットのAの単語例としてAntと一緒に選ばれていまいた。

"The First Reader of the School and Family Series"

A. Lesson I a.
The ape and the ant.
The ape has hands.
The ant has legs.
Can the ant run?

つぎのクライブですが、下記の明治時代の英語副読本を考察している論文に『ロード・クライヴ伝』というのがありました。大学生が読む英語副読本の可能性が高そうです。

明治時代の英語副読本(I)
川戸道昭


実際に、外山からこれらのテキストを使って講義を授かった学生の証言も残されている。 明治 11 年、すなわち外山がマコーレーの『ミルトン』などを講じた年に、文学部1年に在 籍した学生には、坪内雄蔵(逍遥)や高田早苗(半峰)など、後に東京専門学校の設立や 授業に深く関わった人達がいたが、その中の一人高田早苗は当時の外山の授業を振り返っ て次のように言っている。
《私は教授としては外山先生のお陰を一番多く蒙った。外山先生は『ウォーレン・ヘス チングス伝』『ロード・クライヴ伝』又は『ミルトン伝』といふが如きマコーレーの論文 を教科書として、今日でいふ英語の訳読を教へてくれられたのであって、大学の教授としては、専ら論理学、心理学等を受け持って居られた。そして私が先生のお陰を蒙った といふのは、専ら訳読方面であったのである。》
これらのテキストのことで、我々が真に注目しなければならないのは、それが以後の英 語テキストの傾向をほぼ大筋において決定するほどの影響力をもったという点だと思う。 明治 10 年代から 20 年代にかけて、全国の諸学校が先を競うようにして採用した英語副読 本は、その普及の経路を遡ると、ほとんどが東京大学およびその予備門のテキストに帰着 する。それほど、法の統制下にある学制上の事柄はもちろん、各校の選択に委ねられてい たはずの教科書の選定に至るまで、両校は絶大な影響力を誇っていたのである。


こちらの『ロード・クライヴ伝』も2巻目の方だけですが、読むことができます。

The life of Robert, lord Clive;
by Malcolm, John, Sir, 1769-1833


そもそもロバートクライブって誰?って話ですが、「英領インドの基礎を築いたイギリスの軍人、政治家」とあり、オックスフォードの学習辞典にも載っていました。

(Wikipedia)
ロバート・クライヴ (Robert Clive、1725年9月29日 - 1774年11月22日)は英領インドの基礎を築いたイギリスの軍人、政治家。

(オックスフォード)
Robert Clive
(1725-74) an English soldier and administrator (= a person who manages government or business affairs). He is also known as 'Clive of India' because he played a major part in making India part of the British Empire. While working for the East India Company, he fought against the French and broke their power in India. Then at the battle of Plassey (1757) Clive defeated the ruler of the Indian state of Bengal and replaced him with a ruler who allowed the British to govern Bengal through him. This was the beginning of a system that later spread through most of India.


英語版Wikipediaによると、チャーチルがインドでした残酷なことに対して批判的な目を向けられるようになっているように、このクライブに対しても厳しい評価をしているようです。

(Wikipedia)
Robert Clive
Major-General Robert Clive, 1st Baron Clive, KB MP FRS (29 September 1725 – 22 November 1774), also known as Clive of India, was a British officer and soldier of fortune who established the military and political supremacy of the East India Company in Bengal. He is credited with securing India, and the wealth that followed, for the British crown. Together with Warren Hastings he was one of the key early figures in the creation of British India. He also sat for two boroughs as a Tory Member of Parliament in Great Britain.
Recent historians have credited him for atrocities and the subsequent pillage of treasures that occurred in Bengal and India due to high taxation laws he instituted and forced cultivation of crops such as opium resulting in famines.


「猿が手を持つから始めて「クライブ」に終わる教育の恐るべき事。」と語っていますが、クライブ伝の2巻もスカスカですが300ページ近くあります。今の大学生&教師だと読み切るのはきつそうです。。。
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