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Uncharted Territory

自分が読んで興味深く感じた英文記事を中心に取り上げる予定です

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どうしてinを強調しているのでしょうか?

 


With me, the author Scott Anderson. Scott, welcome. You’ve written a best seller, “Lawrence in Arabia.”

このインタビューの冒頭で本の題名“Lawrence in Arabia”を述べるとき前置詞inを強調していますよね。それはなぜでしょうか?答えは後ほど。

ここで話しているのは以前紹介したニューヨークタイムズの中東ルポタージュの著者スコット・アンダーソンの本です。なんと先月翻訳出版されていたんですね。今年がサイクス=ピコ協定から百年経ったことも関係しているのかもしれませんが、渋い本を訳して出版してくれた白水社はやりますね。

ロレンスがいたアラビア(上)
アラブ世界を舞台に暗躍した4人の諜報員の動きを追い、ロレンスを欧州とアラブの同時代人たちの中に位置づけた歴史大作!

著者 スコット・アンダーソン 著
山村 宜子 訳

アラブ世界をめぐって渦巻く欺瞞、密約、だまし討ち
T・E・ロレンスとは何者だったのか?
第一次世界大戦中、アラブ世界を舞台に暗躍した四人のスパイの一人としてロレンスを位置づけ、英、仏、独、露、米、オスマン帝国の思惑とアラブ側の反応を重ね合わせて、中東がかたち作られていく過程を重層的に描いた歴史ノンフィクション!
《全米批評家協会賞》最終候補作

「ロレンスと同じく、この戦域の競争者たちは若くて、与えられた任務のための訓練はまったく受けておらず、ほとんど監督する者もいなかった。(…)ロレンスほど有名ではないこれらの男たちも、共通の特徴である賢さ、勇気、背信の才によって自らの運命と歴史の流れを変えるべく動いた。(…)これら四人が水面下で果たした役割、ひそかな忠誠心と個人的な闘争は、現代の中東を築くのに手を貸した。結果的にその延長上に今日私たちの住む世界がある。」
(「はじめに」より)

中東問題の淵源はここにあった!
死後70年以上経った今日なお、トーマス・エドワード・ロレンスは20世紀のもっとも謎に満ちた、毀誉褒貶相半ばする人物の1人であろう。本書はロレンスの評伝だが、けっして「聖人伝」ではない。第一次世界大戦中、ロレンスをはじめアラブ世界を舞台に暗躍した4人のスパイと彼らを取り巻く人間模様から、ヨーロッパ列強が中東という壺の中に手を突っ込んでかき回すさまを描いた歴史ノンフィクションである。
ロレンスほど有名ではないが、本書で重要な役割を果たす3人とは、表向きは大学講師だが、英国を欺くためオスマン帝国と共謀し、愛人のロシア系ユダヤ人医師を諜報活動に利用していたドイツのスパイ、K・プリューファー。ルーマニア系ユダヤ人の農学者で、オスマン帝国統治下のパレスチナで祖国建設のために奔走するシオニスト、A・アーロンソン。そして米東海岸の名門の出で、大手石油会社の調査員から米国務省の情報員に転身したW・イェールである。
戦況によってめまぐるしく変わる彼らの立ち位置を丁寧に追い、今日の中東紛争の淵源となった時代を躍動感あふれる筆致で描いた注目の歴史大作!


Yutaはオリジナルの洋書がKindleでも買えたのでそちらを読み始めました。

Lawrence in Arabia: War, Deceit, Imperial Folly and the Making of the Modern Middle East

さてLawrence in Arabiaと前置詞inを強調したわけは映画Lawrence of Arabiaとの違いを示したかったからだと思います。



池内恵の本でも『サイクス=ピコ協定百年の呪縛』の最終章で映画『アラビアのロレンス』が触れられていました。「ハリウッド映画は馬鹿にならない」と脚本の出来を褒めています。

 映画では、英国の裏切りに憤るロレンスを、ハーシム家のファイサル王子もまた突き放す。この場面は、民族主義を掲げる各地の指導者が、域外の大国の介入に表向きは反発しながら実は利用しているという中東政治の根深い問題を巧みに表現している。「アラビアのロレンス」の評判を通じて「アラブの反乱」が評判となり、アラブ民族独立の大義が知れ渡り、サイクス=ピコ協定の悪評が高まって交渉力を強めた今、ファイサル王子にとってもうロレンスに用はない。サイクス=ピコ協定を前提としてイギリスと交渉し、ハーシム家にどれだけ有利な条件を勝ち取るか、イギリスの支援を得られるかが、次の課題となる。

 映画の中のファイサル王子がロレンスとイギリス人たちに語るセリフは、フィクションではあるが、現代のアラブ世界の状況にも示唆するところがある。

  ここにはもう戦士の役割はありません。
  われわれが取引をします。取引は大人の仕事です。
  若者は戦争をします。
  戦争の美徳は、若者の美徳です。
  それは勇気と、未来への希望です。
  そして、老人が和平を結びます。
  平和の罪は、老人の罪です。
  それは不信と、慎重さです。


ちょうどその場面がYoutubeにありました。



Prince Feisal: My friend Lawrence, if I may call him that. "My friend Lawrence". How many men will claim the right to use that phrase? How proudly! He longs for the greenness of his native land. He pines for the Gothic cottages of Surrey, is it not? Already in imagination, he catches trout and engages in all the activities of the English gentleman.
General Allenby: That's me you're describing, sir, not Colonel Lawrence. You're promoted, Colonel.

Lawrence: Yes. What for?

Feisal: Take the honor, Colonel. Be a little kind.

Allenby: As a Colonel, you'll have a cabin to yourself on the boat home.

Lawrence: Then, thank you.

Allenby: Well then, Godspeed.

Feisal: There's nothing further here, for a warrior. We drive bargains, old men's work. Young men make wars, and the virtues of war are the virtues of young men - courage and hope for the future. Then old men make the peace, and the vices of peace are the vices of old men - mistrust and caution. It must be so. What I owe you is beyond evaluation.


この本では欧米の帝国主義だけで中東問題を説明した気になる危険性を指摘しています。映画を褒めているのはそのあたりを盛り込んでいるからなんでしょう。「民族主義を掲げる各地の指導者が、域外の大国の介入に表向きは反発しながら実は利用しているという中東政治の根深い問題」を我々日本人は見落としがちですよね。

スコット・アンダーソンの本は厚い本なので今月中に読めればヨシとします。
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