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Uncharted Territory

自分が読んで興味深く感じた英文記事を中心に取り上げる予定です

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食わず嫌いはよくないという話

 


2015年のNYTベストブックの10冊に選ばれていたThe Invention of Natureという本が翻訳されました。読んでみたらもの凄く面白かったのでオススメします。

The Invention of Nature: Alexander von Humboldt’s New World
By Andrea Wulf


Alexander von Humboldt may have been the pre-eminent scientist of his era, second in fame only to Napoleon, but outside his native Germany his reputation has faded. Wulf does much to revive our appreciation of this ecological visionary through her lively, impressively researched account of his travels and exploits, reminding us of the lasting influence of his primary insight: that the Earth is a single, interconnected organism, one that can be catastrophically damaged by our own destructive actions.

英語学習者向けにセールスピッチをするなら英検の好きな歴史、環境がトピックを扱った本で、こうした本は数年後に試験に取り上げられることがあるから今年や来年あたり出るかもしれないよ、とでも言えばいいでしょうか。

フンボルトの冒険  自然という<生命の網>の発明
[著] アンドレア・ウルフ [訳] 鍛原多惠子


フンボルトと数日ともに過ごすのは「数年生きる」のと変わらない。
――ゲーテ

19世紀前半、ナポレオンと並ぶ絶大な影響力をもち、胸躍る冒険と緻密な観測で世界中を魅了した稀有な科学者フンボルト。
その目は、植生や山肌の細部を読みとると同時に、自然と人間のあらゆる現象の連鎖を鋭く見抜いた。科学を起点として、政治、経済、歴史等あらゆる分野を俯瞰し、「地球はひとつの生命である」と唱えたのだ。

環境破壊や武力紛争等、自然と人間の営みが複雑に絡み合う現代において、博物学最後の巨人の今日的意味を描き出し、科学界をはじめ欧米メディアで絶賛された決定版伝記、ついに邦訳! 王立協会科学図書賞受賞、NYタイムズベストブック選定。 

史上、ここまでスケールの大きな人物はいないだろう ──椎名 誠 


負け惜しみを言えば、Invention of Natureというタイトルを見て内容を見くびっていた部分がありました。現在の「自然」という考えは歴史的に構成された見方に過ぎないとでも言いたいのだろうとたかをくくっていたのです。実際、17世紀ごろまでは「世界は人間のためにつくられた」(フランシス・ベーコン)、「(人間は)自然の主人であり、所有者なのである」(ルネ・デカルト)のように人間中心の見方を自然に対して持っていたようで、人間が手を加えることで自然は良くなると考えていた人もいたようです。これに対してフンボルトは日本語版のタイトルにあるような見方をします。

フンボルトは、自然の力がどうはたらくか、自然の網(ウェブ)の糸どうしがどうつながるかを知る必要があると警告した。人類は、ただ自分たちを利するためだけに勝手に自然を変えてはいけないのだ。フンボルトはのちにこう述べる。「人間にできるのは、自然の法則を理解して自然にはたらきかけ、その自然の力を自分たちのために使うことのみである」。そして、こう警告する。人類は環境を破壊する力をもっていて、その結果は破滅的かもしれない、と。

エッセンスだけを見ると予想通りの内容なんですが、フンボルトという人物の当時の影響力の大きさの射程、フンボルト自身奴隷制反対で南米独立に共感を覚えていたことやヨーロッパの革命と反動などの当時のダイナミズムが読んでいてものすごく面白かったです。その凄さを簡潔に伝えるエピソードはダーウィンが一番大きな影響力を受けた人物でビーグル号航海記はフンボルトの本のフォーマットを借用したものにすぎないというものでしょうか。ダーウィンだけでなく、フンボルトは同時代としてはゲーテやトーマス・ジェファーソンと交流し、後の時代のワーズワスやジュール・ヴェルヌ、エマーソン、ソローなどにも大きな影響を与えていたそうです。



「TOEICだけでいいんだよ。他のことなんて知らない方がTOEIC学習には効率がいいんだよ!」という人は以下の賞の発表文だけでも読んでTOEIC頻出トピックの表現を学んでください。評者のコメントの表現の仕方もチェックしておくと実際のTOEICで登場した際も読みやすくなると思います。

The Royal Society announces Andrea Wulf as the winner of the Royal Society Insight Investment Science Book Prize 2016
19 September 2016

The Royal Society has announced Andrea Wulf as the 29th winner of the Royal Society Insight Investment Science Book Prize for The Invention of Nature, her biography of Alexander von Humboldt, an explorer, naturalist and foreign member of the Royal Society.

Andrea Wulf - 2016 Winner
Andrea Wulf
Dubbed “the Shakespeare of the sciences” by his contemporaries, Humboldt inspired scientists, thinkers and writers including Darwin, Wordsworth and Jules Verne with his pioneering idea of nature being one giant organism in which everything is connected.

Yet, in the English-speaking world, he faded from collective memory, despite having more things named after him than anyone who has ever lived. His namesakes include the Humboldt Current – the cold ocean current that hugs South America — mountain ranges in China, New Zealand and South Africa; a breed of penguins in South America; a river in Brazil; a glacier in Greenland; 13 towns in North America and a predatory six-foot squid. And his influence wasn’t limited to this planet; on the moon there is a basaltic plane named Humboldtianum.

In The Invention of Nature Wulf resurrects the reputation of Humboldt as a visionary polymath who made science accessible and popular. His approach combined science and arts by including poetry, history, art and politics alongside hard data.

Chair of judges and former winner of the Prize, Bill Bryson said:
“The decisive factor for the winning book was that it excited and gripped us as judges the most. The Invention of Nature by Andrea Wulf is a thrilling adventure story as much as a science book about a polymath who had an extraordinary impact on our contemporary understanding of nature. It is a book you will find yourself talking endlessly about with friends in the pub.”


たこつぼ化(英語でいうサイロ)しやすい人間の活動に、全体を見渡す必要を訴えるホーリズムの立場というのは歴史的に周期的に現れます。地球規模での思考・行動が求められる環境問題だけでなく、AIなどの登場でこれまでのあり方の全面的な見直しが迫られている中、こういう本を読むことは良い刺激になるに違いありません。



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