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Uncharted Territory

自分が読んで興味深く感じた英文記事を中心に取り上げる予定です

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日経だって侮れない

 
2018/1/12付[有料会員限定]
 安倍晋三首相は12日からバルト3国など欧州6カ国を歴訪する。最初に訪れるIT(情報技術)先進国のエストニアとはサイバー防衛の情報提供などで連携を強化する。日本政府が導入を検討しているインターネット投票でも先行するエストニアとノウハウ共有を進めたい考えだ。

(中略)

 エストニアは07年に大規模なサイバー攻撃を受け、サイバー防衛技術の向上に力を入れてきた。北大西洋条約機構(NATO)もサイバー防衛拠点を同国に置く。日本政府は北朝鮮や中国によるサイバー攻撃に危機感を抱く。原子力発電所などの重要インフラが狙われれば甚大な被害が発生する可能性があり、先行するエストニアから協力を仰ぐ。

エストニアに訪問した安倍首相。先月のNew Yorkerを読んでいたYutaはふーん知っているもんねと優越感に浸っていましたが、普通にエストニアは日経でも色々と記事になっていたんですね。

Letter from Tallinn  December 18 & 25, 2017 Issue
Its government is virtual, borderless, blockchained, and secure. Has this tiny post-Soviet nation found the way of the future?
By Nathan Heller

Up the Estonian coast, a five-lane highway bends with the path of the sea, then breaks inland, leaving cars to follow a thin road toward the houses at the water’s edge. There is a gated community here, but it is not the usual kind. The gate is low—a picket fence—as if to prevent the dunes from riding up into the street. The entrance is blocked by a railroad-crossing arm, not so much to keep out strangers as to make sure they come with intent. Beyond the gate, there is a schoolhouse, and a few homes line a narrow drive. From Tallinn, Estonia’s capital, you arrive dazed: trees trace the highway, and the cars go fast, as if to get in front of something that no one can see.

Within this gated community lives a man, his family, and one vision of the future. Taavi Kotka, who spent four years as Estonia’s chief information officer, is one of the leading public faces of a project known as e-Estonia: a coördinated governmental effort to transform the country from a state into a digital society.

E-Estonia is the most ambitious project in technological statecraft today, for it includes all members of the government, and alters citizens’ daily lives. The normal services that government is involved with—legislation, voting, education, justice, health care, banking, taxes, policing, and so on—have been digitally linked across one platform, wiring up the nation. A lawn outside Kotka’s large house was being trimmed by a small robot, wheeling itself forward and nibbling the grass.

年初の力を入れた記事での導入エピソードはまさにエストニアのe-residencyでした。New Yorkerの記事でももちろん触れています。

パンゲアの扉 ネット・IT 国際・アジア
2018/1/1 2:00[有料会員限定]
一握りの大国や大企業だけが力を振るってきたグローバリゼーションが変わる。小さな国、小さな企業、そして個人。デジタルの翼に解き放たれ、境界を溶かしてゆく。つながる世界への扉が開いた。もう誰も後には戻れない。 

■ビットコインで納税
 移民への反感が渦巻く欧州に「デジタル移民」を募る国がある。人口130万のエストニア。国外に住む人に自国民に準じた行政サービスを提供する電子居住者制度で、143カ国、2万7000人の仮想国民がいる。

 トルコのイスタンブールで旅行業を営むアルズ・アルトゥナイさん(44)は2017年3月になった。「簡単に会社をつくれて欧州全域で営業できる免許をとれた」と喜ぶ。

 テロ頻発による旅客需要の落ち込みで経営が15年ごろから急速に傾いた。打開策を探していたところ見つけたのがエストニアの制度だった。

 申請はインターネットで済む。名前や住所を入力し、旅券の写しをアップロード。手数料101.99ユーロ(約1万3700円)はクレジットカードで払う。1カ月ほどで届く公的個人認証機能を備えたICチップ入りカードが“国民”の証しだ。

 カードがあれば銀行口座を開き、会社もつくれる。エストニアは欧州連合(EU)加盟国。5億人の市場で事業を展開する足場が手に入る。
 
 電子居住者の会社はいま4300。小国エストニアはデジタル空間の活用で投資を呼び込んで経済を活性化し、新たな成長の起点に据える。

電子行政の先進例としてもエストニアが触れられていますが、マイナンバーと絡められると日本人としては身構えてしまいますね。

真相深層
個人情報やりとり、来月本格運用 相次ぐ活用策、政府に焦り 
2017/10/31付

見えぬ利便性
 マイナンバーは何のためにあり、カードは何に役立つのか。日本では国民がそのイメージを描けずにいる。

 番号制が浸透する国もある。電子行政先進国とされる欧州・エストニアの事情を探ってみた。同国の国民も最初は「車のフロントガラスの雪かきにしか使えない」とカードを皮肉ったが、銀行振り込みの手数料を抑えるなどのサービスを手厚くしたら、取得が進んだという。結婚・離婚や不動産取引などを除き、ほぼ全ての行政手続きがネットで完了する。

「結婚・離婚や不動産取引などを除き、ほぼ全ての行政手続きがネットで完了する」の部分はNew Yorkerにもありました。

It was during Kotka’s tenure that the e-Estonian goal reached its fruition. Today, citizens can vote from their laptops and challenge parking tickets from home. They do so through the “once only” policy, which dictates that no single piece of information should be entered twice. Instead of having to “prepare” a loan application, applicants have their data—income, debt, savings—pulled from elsewhere in the system. There’s nothing to fill out in doctors’ waiting rooms, because physicians can access their patients’ medical histories. Estonia’s system is keyed to a chip-I.D. card that reduces typically onerous, integrative processes—such as doing taxes—to quick work. “If a couple in love would like to marry, they still have to visit the government location and express their will,” Andrus Kaarelson, a director at the Estonian Information Systems Authority, says. But, apart from transfers of physical property, such as buying a house, all bureaucratic processes can be done online.

エストニアがなぜIT先進国なり得たのかは、スカイプ創業者が日経の記事で語ってくれています。こちらはNew Yorkerにはなかったエピソードです。

AIと世界 ネット・IT ヨーロッパ AI 2018/1/10 2:00[有料会員限定]
 
 ――なぜエストニアはIT立国になったのでしょうか。
 「エストニアの首都タリンに旧ソ連のサイバネティクス研究所があったことは一因だろう。スカイプの技術統括者で私のビジネスパートナーのある人物は、両親が共にこの研究所のプログラマーとして働いていた。イルベス前エストニア大統領がIT立国を標榜したことも大きい。『タイガーリープ(虎の跳躍)』というプロジェクトを掲げ、全国の学校に新型コンピューターとインターネットアクセスを配備した」

 
 「旧ソ連時代、エストニアではフィンランドのテレビ電波を傍受することができた。そのため私はフィンランド語が話せるようになった。その電波は旧ソ連時代の我々にとって、西側の国の事情を知る窓だった。フィンランドの放送局も、旧ソ連への反対色が強い番組は流さないよう気を使っていた。だが反ソ連のプロパガンダよりも、なにげないフィンランドの日常を垣間見ることができる番組の方が、我々に強い影響を与えた。西側の自由な空気をじかに感じ取ることができたためだ。旧ソ連崩壊後の混乱のなか、開かれた窓からビジネスチャンスを狙って、多くのフィンランド企業がエストニアになだれこんできた。そうした時代のうねりが、我々エストニアのIT起業家を育んだ」

日本ではこのような本も数年前に出ていたようで、New Yorkerの冒頭に登場していたエストニア政府CIOのターヴィ・コトカ氏も序文を書いているそうです。

インプレスR&D (2016/1/29)

世界で最も進んだ電子政府を持つ国、エストニア。未来型のオープンガバメントをいち早く実現し、さらに進化させているこの国の現在の姿を最新情報とともに紹介します。さらに、それを支えるICT技術基盤や電子政府サービスの将来ビジョンも詳細解説。エストニア政府CIOのターヴィ・コトカ氏による序文も掲載。最先端のオープンガバメントに見る新しい社会像を体感してみませんか?

Wiredも記事にしているようですからエストニアはIT関係者には有名な国なんでしょうね。ブロックチェーンの簡単な説明もNew Yorkerで触れています。

2017.02.19 SUN 21:00
ガヴァメントITの分野で破壊的イノヴェイションを次々と打ち出してきた、バルトの小国エストニア。行政においても、いち早くブロックチェーン・テクノロジーの実装を目指す同国は、英国の脱退に揺れるEUの存続に新しい活路をもたらすことができるのか。デザインシンカー・池田純一が綴る、ブロックチェーンの統治システムとしての可能性。(『WIRED』日本版VOL.25より転載)
PHOTOGRAPHS BY YUKI SHINTANI
TEXT BY JUNICHI IKEDA

2017.04.20 THU 19:00
EUとの“ケンカ別れ”ともいえる「ハードブレクジット」(Hard Brexit)が起きうるという評判もまことしやかに語られる英国のEU離脱問題。我が身の未来の憂慮する英国人に助け船を出したのは、北ヨーロッパの小国エストニアだった。
TEXT BY SHOGO HAGIWARA

とは言ってもNew Yorkerの記事に寄れば大半はフィンランドやロシアという隣国みたいですね。

So far, twenty-eight thousand people have applied for e-residency, mostly from neighboring countries: Finland and Russia. But Italy and Ukraine follow, and U.K. applications spiked during Brexit. (Many applicants are footloose entrepreneurs or solo venders who want to be based in the E.U.) Because eighty-eight per cent of applicants are men, the United Nations has begun seeking applications for female entrepreneurs in India.

“There are so many companies in the world for whom working across borders is a big hassle and a source of expense,” Siim Sikkut, Estonia’s current C.I.O., says. Today, in Estonia, the weekly e-residency application rate exceeds the birth rate. “We tried to make more babies, but it’s not that easy,” he explained.

New Yorkerの記事を紹介するつもりだったのが日経もやるじゃんという形になってしまいましたが、日本での取り上げられ方は日本の(政府)ニーズに合わせた切り取られ方をしやすく断片的で全体像はなかなか掴みにくいものです。その点、8000語近くの長さのあるNew Yorkerの記事なら実情をある程度全体像で理解できます。
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