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Uncharted Territory

自分が読んで興味深く感じた英文記事を中心に取り上げる予定です

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等身大に理解することは難しいが大切なこと

 
ポーランドについてはにわかな知識しかありませんので、次のようなNew Yorkerの記事は大変勉強になりました。どの国も歴史と向き合うのは難しいのだと感じます。

Letter from Warsaw
July 30, 2018 Issue
A debate about the country’s past has revealed sharply divergent views of its future.
By Elisabeth Zerofsky

戦争を身をもって知った方が少なくなるにつれて勝手なことを言い始める人が増えるのはどこでも同じようで、そのような危機感から次のような記事を書いたポーランド出身のユダヤ人がいました。ポーランドに生まれ、両親をホロコーストでなくし、自らは抵抗組織で戦い、戦後は社会主義政権下では生きれなくなったためイスラエルに行かざるを得なかったと言う経歴がそのまま歴史の重みを示しているような方です。

Stanisław Aronson
I’m 93, and, as extremism sweeps across Europe, I fear we are doomed to repeat the mistakes which created the Holocaust
Wed 5 Sep 2018 06.00 BST  Last modified on Fri 7 Sep 2018 12.19 BST  

ワルシャワゲットーを生き延びた私の伝えたい教訓
Stanisław Aronson
私は今93歳。過激思想が欧州に広まる中で、ホロコーストを生み出した過ちを繰り返す運命にあるのではと恐れる
Wed 5 Sep 2018 06.00 BST  Last modified on Fri 7 Sep 2018 12.19 BST  

過去を語るのに色々と盛りたくなってしまうでしょうし、都合の悪いことは省きたくなります。そんなことをまず戒め、あるがままに歴史を捉えることを勧めます。

I would, first, urge future generations of Europeans to remember my generation as we really were, not as they may wish us to have(まずヨーロッパの未来の世代にお願いしたいのは、私たちの世代をそうであって欲しいというあり方ではなく、あるがままに知ってほしいということだ)

*******

Confronting lies sometimes means confronting difficult truths about one’s self and one’s own country. It is much easier to forgive yourself and condemn another, than the other way round(嘘と向き合うには自分自身と祖国について厄介な真実と向き合わないといけないときがある。自分を許し誰かを非難する方がその逆よりもずっと簡単だ)

彼の教訓を抜粋したものが以下です。記事の全文を読みたい方はざっくり訳をしたのでこの記事の下の方をご覧ください。

Given what I’ve learned over my lifetime I would, first, urge future generations of Europeans to remember my generation as we really were, not as they may wish us to have been. We had all the same vices and weaknesses as today’s young people do: most of us were neither heroes nor monsters.
私が人生を通して学んだことを踏まえて、まずヨーロッパの未来の世代にお願いしたいのは、私たちの世代をそうであって欲しいというあり方ではなく、あるがままに知ってほしいということだ。私たちは今日の若者と同じように悪い点も欠点もあり、ほとんどが英雄でも残虐非道な人でもなかったのだ。

********

Second, just as there is no such thing as a “heroic generation”, there is no such thing as a “heroic nation” – or indeed an inherently malign or evil nation either. (中略)
  The truth is that, as a Pole and as a Jew, as a soldier and as a refugee, I experienced a wide spectrum of behaviour at the hands of Poles – from those who sheltered me at risk to their own lives, to those who sought to take advantage of my vulnerability, and all possible shades of concern and indifference in between.
2点目は「英雄的な世代」というものがないように、「英雄的な国家」というものもないことだ。さらには本来的に邪悪な国家もない。(中略)  
実際、私はポーランド人およびユダヤ人として、兵士および難民として、ポーランド人による様々な種類の行動を体験してきた。自分の命を危険にさらしてまで私をかくまってくれた人から、私の弱い立場につ付けこもうとした人まで、心配してくれる人から無関心の人までありとあらゆるタイプの人がいたのだ。

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Third, do not underestimate the destructive power of lies. When the war broke out in 1939, my family fled east and settled for a couple of years in Soviet-occupied Lwów (now Lviv in western Ukraine). The city was full of refugees, and rumours were swirling about mass deportations to gulags in Siberia and Kazakhstan. To calm the situation, a Soviet official gave a speech declaring that the rumours were false – nowadays they would be called “fake news” – and that anyone spreading them would be arrested. Two days later, the deportations to the gulags began, with thousands sent to their deaths.
3点目は嘘の破壊力を見くびらないことだ。1939年に戦争が起きた時、私の家族は東方に逃げソビエトが占領するリヴォフ(ウクライナ西部にある現在のリビウ)に数年間暮らした。この町は難民にあふれ、シベリアやカザフスタンの強制収容所への大量移送があるとうわさが立っていた。事態を鎮静化するため、ソビエトの役人は演説をして、うわさはでたらめだと語った。今なら「偽ニュース」と呼ばれるだろう。さらにうわさを広める者は逮捕するとした。2日後、強制収容所への移送は始まり、何千人もが死ぬことになった。

********

Confronting lies sometimes means confronting difficult truths about one’s self and one’s own country. It is much easier to forgive yourself and condemn another, than the other way round; but this is something that everyone must do. I have made my peace with modern Germany, and hope that all Europeans can do the same.
嘘と向き合うには自分自身と祖国について厄介な真実と向き合わないといけないときがある。自分を許し誰かを非難する方がその逆よりもずっと簡単だ。だがこれこそが誰もがしなければいけないことなのだ。私は現代のドイツを折り合えるようになったし、すべてのヨーロッパ人も同じようにできることを期待している。

********

Finally, do not ever imagine that your world cannot collapse, as ours did. This may seem the most obvious lesson to be passed down, but only because it is the most important. One moment I was enjoying an idyllic adolescence in my home city of Lodz, and the next we were on the run. I would only return to my empty home five years later, no longer a carefree boy but a Holocaust survivor and Home Army veteran living in fear of Stalin’s secret police, the NKVD. I ended up moving to what was then the British mandate of Palestine, fighting in a war of independence for a Jewish homeland I didn’t even know I had.
最後に、あなたの世界がなくなることなんてありえないと夢にも思わないことだ。実際我々に起こったのだから。こんなのは次世代に伝えるには至極当たり前に思えることかもしれないが、一番重要であるから強調するのだ。私は故郷のウッチでのどかな青年時代を過ごしていた。その矢先に家族は逃げ出すことになった。その後空になった家に戻ることになるのは5年後で、もはや無邪気な少年ではなくなっていて、ホロコーストの生き残り、国内軍の元兵士としてスターリン政権の秘密警察NKVDに怯えて生活していた。結局私は当時の英国委任統治領のパレスチナに移住することになり、そんなのがあるなんて知らなかったユダヤ人国家の独立のための戦いに参加することになった。

ポーランドの場合、第二次世界大戦後はソ連の影響下に入ったので、歴史の捉え方は複雑になります。そんな事情がわかるのが次の記事。

The long read
Many Poles remember Soviet soldiers saving them from Nazi occupation. But a growing number are rejecting that narrative, and the monuments that come with it.
By Matthew Luxmoore
Fri 13 Jul 2018 06.00 BST 

ただ、にわかの僕でもMany Poles remember Soviet soldiers saving them from Nazi occupation.(多くのポーランド人はソビエト兵がナチスの占領からポーランド人を救ったことを記憶している)はおやっと思いました。先ほどのAronsonさんもポーランドの国内軍に入っていたため社会主義政権下では危険分子扱いされたでしょうから、ポーランド人にとってはソ連は占領軍だと思うのです。Matthew Luxmoore氏はMoscow-based journalist who writes about Russia and eastern Europeとあるのでソ連=ロシア寄りで見ているようです。ですから、ポーランド人読者から反論がきていました。

The USSR rewrote history when it won control of Poland, and today’s nationalist backlash is the fruit of those lies, writes Christopher Cytera
Letters Thu 19 Jul 2018 18.24 BST

ナチスのユダヤ人虐殺ほどひどくないとはいえ、ポーランド人もユダヤ人を迫害したことはNew Yorkerの記事でも触れていましたが、1968年にユダヤ人がポーランドから追放されたこともあったんですね。次のような体験談を読んでもポーランドのユダヤ人の大変さを感じることができます。

Peter Wolodarski
Wed 21 Mar 2018 06.00 GMT

これは中東戦争の影響でイスラエル=米国、アラブ・パレスチナ=ソ連という構図があり、社会主義政権下のポーランドもその構図があったためだと思われます。ポーランド旅行した際にガイドの方が説明してくれていました。

等身大に理解するためには、手間をかけて学ばなければいけないし、見たくないものも見なくてはいけない。そんな面倒くさいことしたくない人がほとんどなんでしょう。ただ、彼の記事についた読者からのコメントを見ると真剣に向き合おうとしてくれている人もいるので希望を少し感じることができます。

先ほどの記事の全文ざっくり訳は以下の通り。

Stanisław Aronson
私は今93歳。過激思想が欧州に広まる中で、ホロコーストを生み出した過ちを繰り返す運命にあるのではと恐れる
Wed 5 Sep 2018 06.00 BST  Last modified on Fri 7 Sep 2018 12.19 BST  
メルケル独首相が今年の夏に次のように語った。「戦争を生き延びた世代がいなくなれば我々が歴史から学んだかどうかわかるだろう」。1925年に生まれたポーランドのユダヤ人として、ワルシャワゲットーを生き延び、ホロコーストで家族を亡くし、ポーランド抵抗組織である国内軍の特殊部隊に従軍し、1944年のワルシャワ蜂起を戦ったものとして、ヨーロッパ史の先頭にいることがどのようなものかわかっている。しかも、この時期から正しい教訓を引き出そうとする取り組みが失敗に終わる危険にあると危惧している。

今は93歳でテルアビブに住んでおり、ここ数年は祖国ポーランドから遠く離れたところから眺めている。祖国では実体験の欠けた愛国者たちが私たちの世代の記憶と経験を彼らの都合のいいように変えようとしてきている。「国威」を示し、今日の若者たちに「誇り」を持たせようとしていると彼らは考えているかもしれないが、現実には未来の世代を闇の中で戦争の複雑さを知らないまま育てることとなり、我々が高い代償を払うことになった過ちを繰り返すこと運命になるだろう。

だがこれはポーランドだけの現象ではない。ヨーロッパ各地で起こっていることだ。我々が体験したことを教訓としてヨーロッパ大陸全体に生かしてほしい。

私が人生を通して学んだことを踏まえて、まずヨーロッパの未来の世代にお願いしたいのは、私たちの世代をそうであって欲しいというあり方ではなく、あるがままに知ってほしいということだ。私たちは今日の若者と同じように悪い点も欠点もあり、ほとんどが英雄でも残虐非道な人でもなかったのだ。

もちろん、多くの人が素晴らしいことを成し遂げたが多くの場合、極限状態でそうせざるをえなかったのだ。そんな状況でも、本当の英雄はめったにいなかったし、私もそうではなかった。

同じようなことはあの時期に道義を踏み外した人たちにも言える。もちろん言語を絶する許しがたい罪を犯した者がたくさんいたが、それでも重要なことは我々は恐怖の中で生きてきた世代ということを理解することだ。恐怖は人に恐ろしいことをさせてしまう。恐怖を感じたことがないと恐怖を本当に理解することはできない。

2点目は「英雄的な世代」というものがないように、「英雄的な国家」というものもないことだ。さらには本来的に邪悪な国家もない。告白するが、私の人生の大部分において、ポーランド人は戦時の取り組みに誇りを持つことが重要だという考えを持っていた。このためナチ占領時のワルシャワで国内軍に従軍した経験を話すとき、ポーランド人側に無関心や非協力な態度があったことを割愛してきた。最近になって初めて、誇りが独善に変わり、さらに独善が自己憐憫や攻撃性に転化していくのを目にしてきた。私が目撃してきた過ちに目を向けてなかったことが間違いだったと思うようになった。
  
実際、私はポーランド人およびユダヤ人として、兵士および難民として、ポーランド人による様々な種類の行動を体験してきた。自分の命を危険にさらしてまで私をかくまってくれた人から、私の弱い立場につ付けこもうとした人まで、心配してくれる人から無関心の人までありとあらゆるタイプの人がいたのだ。

ナチス第三帝国が私たちの世界を崩壊させたのは確かだが、一人のドイツ人女性が私の命を救ってくれることになったのだ。彼女は男性を紹介してくれて私はポーランド抵抗組織に入ることになった。どの国も善を独占することはない。このことは同胞イスラエル市民を含め多くの人が理解するに苦労している。

3点目は嘘の破壊力を見くびらないことだ。1939年に戦争が起きた時、私の家族は東方に逃げソビエトが占領するリヴォフ(ウクライナ西部にある現在のリビウ)に数年間暮らした。この町は難民にあふれ、シベリアやカザフスタンの強制収容所への大量移送があるとうわさが立っていた。事態を鎮静化するため、ソビエトの役人は演説をして、うわさはでたらめだと語った。今なら「偽ニュース」と呼ばれるだろう。さらにうわさを広める者は逮捕するとした。2日後、強制収容所への移送は始まり、何千人もが死ぬことになった。
 
これらの人々をはじめ何百万の人々は、私の肉親も含め、嘘によって殺された。私の国とヨーロッパ大陸の大部分が嘘によって破壊されたのだ。現在、嘘はこの時代の記憶だけでなく、それ以降に成し遂げたものまでもゆがめている。今の世代には議論ができる余裕を持ち合わせていない。それは警告をまったく受けなかったし、嘘によってどんな結果が待ち構えているのか理解していなかったのだ。

嘘と向き合うには自分自身と祖国について厄介な真実と向き合わないといけないときがある。自分を許し誰かを非難する方がその逆よりもずっと簡単だ。だがこれこそが誰もがしなければいけないことなのだ。私は現代のドイツを折り合えるようになったし、すべてのヨーロッパ人も同じようにできることを期待している。

最後に、あなたの世界がなくなることなんてありえないと夢にも思わないことだ。実際我々に起こったのだから。こんなのは次世代に伝えるには至極当たり前に思えることかもしれないが、一番重要であるから強調するのだ。私は故郷のウッチでのどかな青年時代を過ごしていた。その矢先に家族は逃げ出すことになった。その後空になった家に戻ることになるのは5年後で、もはや無邪気な少年ではなくなっていて、ホロコーストの生き残り、国内軍の元兵士としてスターリン政権の秘密警察NKVDに怯えて生活していた。結局私は当時の英国委任統治領のパレスチナに移住することになり、そんなのがあるなんて知らなかったユダヤ人国家の独立のための戦いに参加することになった。

きっと私がほんの子供で嵐が近づいていることに気付かなかっただけかもしれないが、私よりもっと年上で賢明なほとんどの人たちも私のような子供の感覚を共有していた。

もし厄災が起こったら、今まで抱いていた空想はすべて何の役にも立たないとわかるだろう。倫理の崩壊した社会で生きることがどんなものか目にすることだろう。これまでの前提や先入観すべてが崩れ落ちることになるのだ。そして、すべてが終わった後、やがてそして確実にこれらの最も厳しい教訓が忘れられたことを目撃するのだ。その目撃者たちが伝え、新たな神話が生まれることになるだろう。
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