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Uncharted Territory

自分が読んで興味深く感じた英文記事を中心に取り上げる予定です

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Your novel made me feel it.

 
National Geographicの最新号が日系アメリカ人を取り上げ、強制収容の歴史を中心に書いていましたが、ちょうどJapan Timesの書評でNo-no boyが日本の必読本として紹介されていました。

BY KRIS KOSAKA
CONTRIBUTING WRITER

It may be one of the only true classics of Japanese fiction that most Japanophiles have never heard of. “No-No Boy,” a 1957 novel by Japanese-American writer John Okada, unravels the complicated, varied perspectives of Japanese-Americans in the aftermath of World War II under the shadow of the internment camps of the American northwest.

(Amazonの紹介文)
国家、民族、国民同士が分断される時代に読み継がれるべきアメリカ文学
全米で15万部超えのロングセラー 待望の新訳刊行。朝日新聞「読書」欄ほか各紙誌で紹介、好評。
戦争が、自分の中の〝アメリカと日本〟を引き裂く。
徴兵を拒否した日系人のアイデンティティーの喪失と苦悩とは?
トランプ大統領が生まれたアメリカを知る若者から大人まで、読んでおきたい名著。


●日系アメリカ人2世、ジョン・オカダが残した唯一の小説。戦争によって〝日米〟という2つの祖国に引き裂かれたアイデンティティーの危機というテーマを真正面からとらえながら、同時に、「戦争、差別、偏見が消えることのない世界」への鋭い嫌悪の眼差しを向ける。1957年の出版当時は、評判にならず絶版。70年代にその価値が見直され復刊、2016年現在、全米で15万部を超えるロングセラーになっている。かつて日本で翻訳が出た当初は高い評価を得ながらも、結局のところ姿を消してしまった。それが“パールハーバー攻撃"から75年目の2016年末、とうとう新訳によって蘇った。歴史の教訓も忘れられたかのように、異質なものを排除し、他者に対する不寛容な空気が世界に広がるいま、自分は何者か、どう生きていくべきか、〝時代〟と〝国境〟を越えた普遍的な問いは、永遠の青春文学でもある。


●日米開戦後、西海岸地域に住むアメリカの日系人は収容所に入れられる。アメリカ陸軍は、収容された日系人男子に忠誠度を調べる質問をいくつかした。そのなかで、「あなたはアメリカ合衆国の軍隊に入り、命ぜられたいかなる場所でも戦闘義務を果たしますか?」と「あなたは無条件でアメリカ合衆国に忠誠を誓い、合衆国を外国や国内の敵対する力の攻撃から守り、また、日本国天皇をはじめいかなる外国政府・権力・組織に対しても忠誠を尽くしたり服従したりしないと誓えますか?」と質した。この2つの質問に「No(ノー)」と答えたものが、「ノーノー・ボーイ」と呼ばれたのである。
本書の主人公イチローは、若き二世である。アメリカ市民でありながらその権利をはく奪されたことに怒り、また、日本を狂信的に愛しながら勝利を信じる母親の心にも背けずにいた彼は、母国アメリカへの忠誠を拒否し刑務所に入ることになってしまう。戦争が終わり出所したイチローは、故郷のシアトルに戻ると、戦前とすっかり変わってしまった空気のなかで、さまざまな「人間」と出会う。いまだに日本の勝利を疑わない母、それを酒でごまかし見守るしかない弱い父。戦うことのなかった兄イチローを恥じ、軍に入るという弟。イチローをなじる従軍した日系人、自分と同じように国家に背を向け自暴自棄になる友人、戦傷がもとで死を待つばかりの友、訳あって戦地から帰らぬ夫を待つ日系人の妻・・・。傷つき、苦しみ、さまよう果てに、いったいどんな光が見えてくるのだろうか。

この書評でRuth Ozekiさんの前書きをa compelling, insightful forward by Ruth Ozekiと書いていましたが、彼女の思いが詰まったとても丁寧なものに仕上がっています。OzekiさんはA Tale for the Time Beingの小説で知られていますね。Amazonのなか見!検索で前書きも読めるので是非。

以下が抜粋ですが、それまでnormative postwar assimilationist valuesに染められていて当時の日系アメリカ人を感じることはなかった。この小説に出会うことで感じることができたと褒めています。単に知識を得るのではなく追体験して感じることができるのは小説ならではの楽しみです。

When I finally did read your book, at the age of forty-something, I was stunned. I'd grown up in the shadow of World War II. I knew about the internment, and I had a general sense of the world you describe in the novel, but I'd never felt it before. Your novel made me feel it. The way you told Ichiro Yamada’s story shocked me into realizing how profoundly shaped I'd been by the normative postwar assimilationist values that were so prevalent among people of Japanese heritage living in America, including my own family. This may sound unbelievable but I'd never realized, until I read your novel, that a Japanese American could be angry. Mad with rage, or just plain crazy! I thought the Japanese American emotional palette comprised more neutral shades: resignation, obedience, forbearance, sadness, nostalgia, regret.

Reading No-No Boy reminded me that history—and in this case, a history I thought I knew—is so much more than just facts.



normative postwar assimilationist valuesはジョージ・タケイさんのTEDスピーチが体現していると思います。日系人は強制収容され、解放後には苦労した。また中には戦地で442部隊で勇敢に戦ったものがいた。National Geographicのアン・カリーさんも強制収容に反対したフレッド・コレマツさんに触れてはいましたが、概ねそのような流れで記事を書いています。

しかし、no-no boyは現在からみて主流から外れた人を扱います。でもof course they had their reasons, which were various and complexとOzekiさんが書くようにそれぞれの事情があったんですよね。

But I didn't know that while many of the young men answered yes-yes to these two questions, some, like Ichiro, did not. I'd never thought about it until I read your book, but of course they had their reasons, which were various and complex. Some had family in Japan and did not want to have to kill a brother or a cousin in combat. Others were tripped up by semantics: they were Americans, so how could they forswear an allegiance to a foreign emperor they'd never pledged to begin with? And still others didn't understand why they should give their lives for a country that had branded them “enemy aliens,” stripped them of all rights of citizenship, herded up their families, corralled them like cattle, and forced them to submit to the draft.

例えばYukio Kawarataniが二つの質問にNoと答えた理由を説明してくれています。



No-no boyを読んだ後次の日本語の本を読みましたが、やはりnormative postwar assimilationist valuesで単純に語れるような状況でなかったことがわかります。

川手 晴雄 

どうしても歴史を単純化して描きたくなりますが、そんなわけないですよね。さらに興味深いのは同じことでも時代が変われば評価も変わるということです。No-no boyは戦後すぐは黙殺されましたが、公民権運動などの高まりで1970年代には再評価されたとか。単純化しない、評価を下す場合どんな価値観に基づいているのか自覚すること、といった態度は、効率的な学習法の対極にあるので今後も流行することはないでしょうが、その大切さは忘れないでおきたいです。
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