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Uncharted Territory

自分が読んで興味深く感じた英文記事を中心に取り上げる予定です

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Awake your faith

 


先ほど紹介したEconomistの社説のパラグラフタイトルにI have drunk and seen the spiderとありました。

I have drunk and seen the spider
Two precautions would help prevent any of these flashpoints sparking a conflagration. One is a system for minimising the threat from potential dangers. Nobody is quite clear what will happen when North Korea implodes, but America and China need to plan ahead if they are to safeguard its nuclear programme without antagonising each other. China is playing an elaborately dangerous game of “chicken” around its littoral with its neighbours. Eventually, somebody is bound to crash into somebody else—and there is as yet no system for dealing with it. A code of maritime conduct for the area is needed.

なんじゃこりゃと思ったらシェイクスピアの『冬物語』からの引用でした。松岡和子さんの訳本では「*当時の迷信では、蜘蛛が入ったものをそれと知らずに飲食すれば無害、見てしまうと毒に当たる。」と注がありました。訳はすべて松岡和子さんの本によるものです。



(1分50秒当たりから)
How blest am I
In my just censure! in my true opinion!
Alack, for lesser knowledge! how accurs'd
In being so blest! There may be in the cup
A spider steep'd, and one may drink; depart,
And yet partake no venom (for his knowledge
Is not infected), but if one present
Th' abhorr'd ingredient to his eye, make known
How he hath drunk, he cracks his gorge, his sides,
With violent hefts. I have drunk, and seen the spider.
(II.i.36-45)

いやあ、恵まれているぞ、俺は、
正しい判断力、真実を見抜く目!
ああ、知らなければよかった! こんなに恵まれれているのが
忌々しい! 杯の中に蜘蛛がひたっていて
その酒を飲んで席を立っても
毒に当たらないことがある、
知らなかったからだ。だが、おぞましい中身を
目にし、何かを飲んだか知ってしまうと、
喉をかきむしり脇腹をかきむしって
激しく嘔吐する。俺は飲んで、毒蜘蛛を見てしまった。

第一次世界大戦の惨禍を知っている我々はI have drunk, and seen the spiderということなんでしょうか。

翻訳者は調べればよいですが、通訳の方はとっさにこういうものが出てくると対応するのも大変でしょうね。教養の豊富な通訳は日本にどれだけいるでしょうか。

『冬物語』のテーマはfaith(信じる心)だそうです。最後の有名な場面が以下のようです。



(4分40秒あたり)
PAULINA
It is required
You do awake your faith. Then all stand still;
On: those that think it is unlawful business
I am about, let them depart.

LEONTES
Proceed:
No foot shall stir.

PAULINA
Music, awake her; strike!
(Music)
'Tis time; descend; be stone no more; approach;
Strike all that look upon with marvel. Come,
I'll fill your grave up: stir, nay, come away,
Bequeath to death your numbness, for from him
Dear life redeems you. You perceive she stirs:
HERMIONE comes down

ポーライナ それにはまず、信じる力を目覚めさせて
いただかねばなりません。では、どなたもお動きになりませんよう、
私がこれからすることが法に触れるとお考えの方は
ご退席願います。
レオンティーズ 始めろ。
誰も動いてはならない。
ポーライナ 楽師たち、目覚めの音楽を! (音楽)
時が来ました、お降りください、もう石ではない、こちらへ。
並み居る皆様を驚かせて差し上げて。どうぞ、
お墓は私がふさぎます。動いて、さ、こちらへおいでください。
無感覚は死にお譲りなさい、貴い命が死の手から
あなたを取り戻したのですから。ご覧ください、お動きになります。

同じく松岡和子さんの解説をご紹介させていただきます。

第五幕第三場、ポーライナがハーマイオニの彫像を動かそうとする直前に言う「それにはまず、信じる力を目覚めさせていただかねばなりません(It is required You do awake your faith. Then all stand still)」。このfaithも当初は「ご信仰」としたのだが、それを「信じる力」に変えた。faithを宗教的な信仰心にとどまらず、演劇の舞台で起こることを信じることと解釈したのである。(中略)
『冬物語』の舞台では、劇中人物たちも観客も、信じる力によってこの「物語」の最も奇跡的な出来事を目の当たりにする。現実の世界ではおよそあり得ないことを「あり得る」と信じさせてくれる劇、それが『冬物語』なのだ。

もちろん、こんな知識がなくても、社説の理解に大きな影響を及ぼしませんが、このような教養はより幅のある深みのある理解を可能にしてくれるのは間違いないでしょうね。
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