Posted at 2014.09.28 Category : 読書報告
福島からハワイ、サンフランシスコへ移っていく、ハリウッド版Godillaですが、メルヴィルの『白鯨』でモビーディックを発見するのも日本海だったのですね。捕鯨船の流れとゴジラを結びつけるのは単なるキャッチですが、『白鯨』が、日本への言及が結構あるのをある本を読んでいて知りました。ちなみに『白鯨』が出たのはペリー来航の直前のことなので、鎖国中の日本です。
文学の名作をキャッチにするのは記事やレポートでは常套手段で、例えば以下のような記事がありました。
「バカ足すバカ」大連立への殺意
2011年5月号 [いまここにある毒]
我執に凝り固まった船長が広げた海図。ニホン(本州)、マツマイ(松前)……船は日本近海にいた。船長が咆吼する。「さがれ! 漏らしておけ! このわしも漏れっぱなしだわい。穴をふさぐつもりはないぞ」
メルヴィル『白鯨』の一場面である。そこは奇しくも今回の震源と津波の海域だ。神をも畏れぬ老船長は、白鯨への復讐に目がくらみ、船倉の油漏れなどに構うなと、一等航海士に銃をつきつける。航海士の「目に一瞬、閃光」が走った。が、謀反に踏み切れない。無理心中を覚悟するしかないのか。
この部分は『白鯨』の109章で、Starbucksの名称の元と言われている船員がタイトルに入っていますね。
HAPTER 109. Ahab and Starbuck in the Cabin.
(中略)
Now, from the South and West the Pequod was drawing nigh to Formosa and the Bashee Isles, between which lies one of the tropical outlets from the China waters into the Pacific. And so Starbuck found Ahab with a general chart of the oriental archipelagoes spread before him; and another separate one representing the long eastern coasts of the Japanese islands—Niphon, Matsmai, and Sikoke. With his snow-white new ivory leg braced against the screwed leg of his table, and with a long pruning-hook of a jack-knife in his hand, the wondrous old man, with his back to the gangway door, was wrinkling his brow, and tracing his old courses again.
この言及を知ったのは、以下の本です。ジョン万次郎とメルヴィル、大森貝塚のモース、岡倉天心とボストンなど、ボストンを中心とした米国と日本との交流を取り上げた興味深い本です。
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この本の紹介はまた機会を改めてさせていただくとして、ちょっと残念だったのは、he Japanese islands—Niphon, Matsmai, and Sikokeというところで、Masmaiをメルヴィルの無知として片付けてしまっていることです。とても丹念に調査している本ですが、松前=北海道という連想は外国人には難しいのかもしれません。こういう所は、ネイティブなら普通に連想できることが、外国人には難しい例となると思います。知識は馬鹿にされやすいですが、されど知識なんですよね。
(Melville was mistaken about the nonexistent island of "Matsmai." an emblem of American ignorance of Japan in 1850. but "Sikoke"' is Manjiro's island of Shikoku )
このような細かい点でGreat Waveという本の価値は下がることはないですが、Moby DickのPenguin版の注では、ちゃんと北海道だと解説してくれていますので、ちょっと調べて欲しかったなというのが本音です(苦笑)
585 the Japanese islands—Niphon, Matsmai, and Sikoke The nomenclature is odd: the Japanese call the whole of Japan ‘Nippon’ or (‘Niphon’), though Ishmael appears to mean only the large central island, the seat of government; ‘Matsmai’ (or Matsumai, the old name for the city of Fukuyama on the straits) is Hokkaido, the large northern island; ‘Shikoke’, now Shikoku, is the smaller of the two southern islands, Japan at this time, of course, was still a ‘double-bolted land’. (p. 206, note)
Moby Dickは三陸沖に登場したと書いているブログもありましたが、Wikipediaによると、具体的に日本のどこかというのではないそうです。
• 本作中、目指す最終目的地として繰り返し「日本海」の名が出るが、これは今日認められるいかなる定義よりはるかに広大な範囲(赤道付近の日本海という記述すらあり、太平洋の北西全域程度)を指すようである。飽く迄当時の鯨取りの便宜的名称と見るべきであろう
地図も含めて説明してくれているサイトがありました。以下の部分です。地図はリンク先を参照ください。
ハワイ・小笠原・北海道を結んだ中がジャパングラウンド
川澄
このとき、「on the coast of Japan」という言葉を使っている。 アメリカの捕鯨船は、日本漁場と言って「towards Japan」とか「at Japan」、「on the Japan grounds」など、さまざまな表現を使うんです。 これは日本沖と訳しがちですが、最初のうちは日本が見えるところじゃなくて、日本とハワイの中間地点ぐらいなんですね。
大隅
ジャパングラウンドといわれる場所は、長方形のと三角形のと二種類ありますが、ハワイと小笠原と北海道を結んだ三角形の中で、マッコウクジラがたくさん捕れたので、そう称された。
川澄
ですから、日本沖というのは、日本に近いというよりも、最初のうちは大体の目標という意味だったんですね。 それがだんだん日本沖に近づいてくる。
マッコウクジラが一番多かったのは小笠原から房総あたりまでですから、捕鯨船が鳥島に立ち寄って、ジョン万次郎を始め、たくさんの漂流民が救助されることになる。 鳥島は小笠原と伊豆半島との中間あたりにありますので。
『ペリー提督日本遠征記』の翻訳完全版が最近出ましたが、元の英語オリジナル版も簡単に参照できますので、読んでみたくなりました。
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