![]() | シェイクスピア『ハムレット』 2014年12月 (100分 de 名著) (2014/11/25) 河合 祥一郎 商品詳細を見る |
楽しみだった河合先生のNHKテキストを早速購入し読みました。思い悩む優柔不断なハムレット像は19世紀のロマン派が作り出した解釈に過ぎず、人間存在のあり方を追求した文武両道なハムレット像こそがシェイクスピアが作品に込めたハムレットではないか。このような感じで、河合先生はなるべくシェイクスピア自身や当時の状況・考え方に引きつけてハムレットを理解しようとする態度で書かれています。河合先生の理解でいけば、マッチョなギブソンのハムレットの方がむしろあっているかもしれません。
人間存在の追求の悲劇と捉えている河合先生の見事な解釈はTo be or not to beからLet beへと受け止めるようになるハムレットで要約されています。詳細は是非、テキストをご覧いただきたいのですが、Let beのある台詞を確認しておきます。ケネスブレナーは優柔不断なハムレット寄りなのですが、Let beは彼の動画しか見つかりませんでした。日本語は河合先生の訳です。
ハムレット
(…)雀一羽落ちるのにも神の摂理がある。無常の風は、いずれ吹く。今吹くなら、あとでは吹かぬ(If it be now, ’tis not to come.)。あとで吹かぬなら、今吹く。今でなくとも、いずれは吹く。覚悟がすべてだ。生き残した人生など誰にもわからぬのだから、早めに消えたところでどうということはない。なるようになればよい。
英語は現代語訳を一緒に紹介してくれているNo Fear Shakespeareからです。
No Fear Shakespeare Act 5, Scene 2, Page 10
Not a whit. We defy augury. There’s a special providence in the fall of a sparrow. If it be now, ’tis not to come. If it be not to come, it will be now. If it be not now, yet it will come—the readiness is all. Since no man of aught he leaves knows, what is ’t to leave betimes? Let be.
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You’ll do no such thing. I thumb my nose at superstitions. God controls everything—even something as trivial as a sparrow’s death. Everything will work out as it is destined. If something is supposed to happen now, it will. If it’s supposed to happen later, it won’t happen now. What’s important is to be prepared. Since nobody knows anything about what he leaves behind, then what does it mean to leave early? Let it be.
Youtubeで探してもほとんど見つからなかったようにLet beの部分はそれほど有名ではないようです。David Tennantのハムレットではthe readiness is all(覚悟がすべてだ)で終わってしまってカットされています(5分あたり)。
とすると、先生のTo be or not to beからLet beへの悟りという解釈はそれほどメジャーなものではないとも言えるかもしれませんが、大変説得力のあるものでした。
David TennantのハムレットはBBCが特設サイトを作っており、大変わかりやすくハムレットになじめるようになっています。Plotですじを追ってからハムレットを読んでもいいかもしれません。
Plot
Past Productions
Let beは現代語訳ではLet it beとなっていました。お約束ですが、どうしてもこの曲になってしまいますよね。
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